決算月(年末・年度末)の内覧会(竣工検査)の注意点と対策

決算月の内覧会の注意点と対策

新築住宅が完成してから行われる竣工検査(完成検査や内覧会ともいう)は、売主や建築会社の決算月に実施されることが少なくありません。

決算月は会社によりますが、年1~4回あり、その月は3月、6月、9月、12月に集中しています。これらの月以外でもよく会社が自由に定められるのですが、日本の会社はこの月としていることが非常に多いです。

その決算月に行われる内覧会(竣工検査)では、問題が多く生じていることもあり注意を要するため、その理由や対策について紹介します。3月、6月、9月、12月に内覧会がある人には必読のコラムです。

1.期末の内覧会(竣工検査)は施工ミスが多い

決算期末に内覧会が実施されるケースは多いですから、住宅購入者のなかで該当する人も多いはずです。施工ミスが多いと聞くと不安になるかもしれませんが、その実態や理由、対策を知ることでリスクを抑えることも可能です。

1-1.決算期末の内覧会では施工ミスが多く発見される

売主や建築会社の決算月(3月、6月、9月、12月)に行われる内覧会(竣工検査)では、問題が多いと書きましたが、その問題の多くは施工ミスです。施工ミスが多発するために、買主(注文建築なら施主)が引渡しを受ける前の段階で十分に注意しなければなりません。

また、決算月のなかでも月末(つまり会社の期末)に近い日程が最も注意を要する時期です。具体的には、3月下旬、6月下旬、9月下旬、12月下旬です。この時期の内覧会では施工ミスが最も多く確認されており、買主が何ら対策をせずに望むと内覧会の後や引渡しの後に強く後悔することも多いです。

決算月の内覧会では施工ミスが多く発見されることを理解して、対策を検討しなければなりません。

1-2.引渡し日がずっと先ならリスクは低い

決算月の内覧会に施工ミスが多いとはいえ、全てのケースにあてはまるわけではありません。

たとえば、12月に内覧会があるものの、引渡しが翌年の2月にあるというケースです。このケースでは、内覧会で施工不具合等を買主から建築会社等へ指摘した後、建築会社がゆとりをもって補修対応できる期間があります。

これだけゆとりあるスケジュールを組んでいる場合、建築会社は工程に多少の遅れがあっても内覧会の日程調整で対応すればよいので、現場に無理が生じづらいのです。

つまり、このことはリスクが高いか低いかを見分けるポイントになりますね。内覧会の実施時期と引渡し日の期間が長いとリスクが低いといえ、2カ月以上あれば安心感は高く、1カ月以上であればやや高いといったところです。

しかし、2カ月以上の期間を設けるケースは、大手不動産会社が販売する新築マンションでは見られるものの、そのほかではあまりありません。一戸建て住宅ではほとんど該当しないでしょう。

2.なぜ決算月は施工ミスが多いのか?

年度末や年末に集中する決算月ですが、その時期に施工ミスが多く確認されるのは、明確な理由があります。リスクが高い理由ははっきりしているのです。その理由をここで説明します。

2-1.売主・建築会社が売上計上のために完成を急ぐ

1つ目の理由は、その住宅の売主や建築会社の都合と深く関係があります。

ほとんどの会社が、住宅の分譲・建築による売上や利益について目標(計画)を持っています。目標は年単位のものもあれば月単位のものもありますし、4半期ごとの目標を持っていることも多いです。売上を計上するタイミングは原則として住宅を買主(注文建築なら施主)に引渡したときです。

目標を達成するために、決算期末には何としても買主に住宅を引渡してしまいたいと考えることが非常に多いのです。

同じ会社であっても、支店が異なると同じ決算月なのに対応が大きく異なることがあります。それは、支店によって目標の達成度が異なるからです。既に目標をクリアしている支店では、無理に引渡そうとしないケースもあるのです。

つまり、目標を達成できていない、もしくはもうすぐ達成できるという状況であるほど、引渡しを急ごうとしますから、引渡すために工事を急ぐよう現場に督促し、完成を急がせる確率が高くなるのです。

2-2.営業マンは個人成績のために内覧会を急ぐ

決算月の内覧会で施工ミスが多くなる2つ目の理由は、営業マンの都合にあります。

会社や支店に目標があることは上に書いた通りですが、個々の営業マンにも目標はあります。仮に目標がなくとも営業成績は会社内での評価や給与に深く関係しますから、売上をあげなければなりません。

営業マンの営業成績の計上も、引渡しをするタイミングであることが一般的ですから、営業マンの都合と会社の都合は利害が一致しており、決算月になれば目の色をかえて買主に内覧会の実施や引渡し日の調整をする人も多いです。

個人の営業成績が良い場合でも、会社の目標に対する進捗次第では会社からのプレッシャーや要望もあるので、内覧会や引渡しを急かそうとすることは非常に多いです。

施工ミスの指摘

2-3.完成・内覧会を急ぐと施工ミスが増える

売主や建築会社、そして営業マンの都合によって、現場に工事を急がせて完成を急ぎ、内覧会を行うことは施工ミスが生じやすい環境だと言えます。

元の工程よりも工事が遅れたために工事を急かす場合もそうですが、元から厳しすぎる工期・工程を組んでいる現場も多く、そういった現場でも工事を急がせています。

工事を急ぐということは、それだけ途中の工事が雑になりやすいわけであり、建築会社内の社内チェックも適切に実施することができません(社内チェック体制がない会社も多いです)。

そのような状況であるにも関わらず、売主や建築会社が委託している第三者検査機関の検査を受けているから安心だと言うことがありますが、実際にはそれらの機関はごく一部の工程においてわずかな時間(5~20分程度)の簡易な検査しかしておらず、内覧会や引渡し後に多くの施工ミスが発見される事態になっているのです。

ちなみに、ほぼ全ての住宅が何らかの外部機関(売主等がいう第三者機関)の検査を受けておりますが、それが本当に適切に機能している住宅は少ないです。

工事を急ぐと何も良いことはありませんから、買主の立場としては十分に注意して対応する必要があります。

3.決算月(年末・年度末)の内覧会で買主がとるべき対策

決算月(3月、6月、9月、12月)に行われる内覧会(竣工検査)のリスクの高さとその理由については理解できたことでしょう。それでは、次に買主(注文建築なら施主)がとるべき対策を紹介します。ここが大事なポイントになるのは言うまでもありません。

3-1.時間をかけてじっくり竣工検査をする

内覧会で失敗しないための有効な対策の1つが、内覧会そのものの時間を十分にとるということです。

何も考えずに内覧会に臨む人は、売主側から設備機器等の取扱い説明を受けて、家具やカーテンなどのための採寸をして、あとは傷や汚れがないかチェックする程度で終えてしまいます。時間にして、長くても1時間以内で、人によっては30分もかからない人がいます。

しかし、内覧会では契約した通りの住宅が出来上がっているのか図面と照合したり、傷・汚れ以外にもっと大事な施工ミスがないかチェックしたりしなければなりません。こういったチェック作業だけでも、時間がかかるものであり、且つ慣れない体験であることを考えれば、仮に建物面積が30坪(約100平米)の住宅だとして2時間はかけて確認する必要があるでしょう。

内覧会の日程を売主等と調整する際、2時間以上の時間をかけてじっくり確認したいと申し出て、それだけの時間をとってもらうようにしましょう。そのときに、「そんなに時間をかける人なんていませんよ」などと言われることがあるかもしれませんが、それはきちんとチェックせずリスク抑制をできていない人の話であり、本来の対応とは言えませんから気にすることはありません。

また、専門家に内覧会への同行を依頼すると、それくらいの時間はかかるものです。

3-2.1人ではなく2人以上で内覧会に参加する

なかには、内覧会を1人だけでやってしまおうとする人もいます。一人暮らし用にマンションを購入した人や、夫婦のいずれかが仕事などで参加できないというケースです。しかし、一人だけの内覧会はオススメできません。

慣れない人が1人で見るのは大変ですし、立ち会う建築会社の目線がプレッシャーになることは間違いないでしょう。「1人だけで内覧会(完成検査)のチェックをできるか」も参考にしてください。

両親や兄弟に頼むなどして2人以上の人数で内覧会に臨むようにしてください。

3-3.無理せず専門家に同行を依頼する

内覧会当日をもっとも安心して乗り切るために有効な方法は、多少の費用がかかるものの、専門家に同行を依頼することです。依頼するのは、建築の専門家である一級建築士が依頼者の味方となってチェックしてくれる「内覧会立会い・同行サービス」です。

内覧会の時点で確認可能な範囲において施工ミスの有無をチェックしてくれるサービスですが、買主が舞い上がったり建築会社のプレッシャーを感じたりする場面でも頼りになるでしょう。

一戸建てでもマンションでも利用されていますが、やはり決算月の利用は多くなる傾向です。大きな買い物でリスクが小さくないことを考えれば、検討する価値はあるでしょう。

3-4.引渡しは完成を確認してから

最後に、内覧会の後についての大事な注意点を紹介します。この注意点を疎かにするだけで、住宅購入が失敗してしまうものですから大事なことだと捉えてください。

住宅を購入してから引渡しを受ける際、対象の住宅は完成状態でなければなりません。引渡しの際は、代金の全てを支払いますから、これは当然のことです。

しかし、決算月に売上計上したい売主などが、完成していない住宅を買主に対して無理矢理に引渡してしまおうとすることがよくあります。内覧会立会い・同行サービスを利用したいという人から、これまでに何度も何度もこの相談を受けてきました。

未完成なのに代金全額の支払いを要求し引渡したことにしようとするのです。そんな無茶苦茶な話が出てきたときは、必ずはっきりと断らなければなりません。引渡しは、必ず現場で完成を確認してから実施してください。

以上、決算期・決算月の内覧会(竣工検査)に関する注意点や対策です。マイホームを手にする直前の大事なイベントですが、売主側の急ぎすぎに合わせずに対応したいものです。

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